ホーム > ブログ > 心療内科医の役割と勤労者のメンタルヘルス(その1)
2019年12月07日
千里中央(大阪府豊中市・北摂千里ニュータウン)、心療内科(メンタルヘルス科)・復職支援(リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回から「心療内科医の役割と勤労者のメンタルヘルス(勤労者の心療内科的健康)」というタイトルで、心療内科医の役割と勤労者のメンタルヘルス(心療内科的健康)について詳しく触れたいと思います。
現代は変革の時代といわれています。近年の日本では社会、産業、経済、医療、教育のすべての分野で変革が進行中です。変革のスピードが速ければそれに適応できない人が増え、社会のさまざまな分野で問題が生じてきます。メンタルヘルスの面(心療内科的健康の面)からみると、うつ病などのメンタルヘルス疾患(心療内科的健康疾患)や心身症などのストレス関連疾患、あるいは行動上の問題、最悪の形として自殺が増えてきます。
メンタルヘルスの問題(心療内科的健康の問題)はさまざまな切り口でとらえられています。例えば心理的発達の面からみれば母子保健、学童のメンタルヘルス(学童の心療内科的健康)や青少年のメンタルヘルス(青少年の心療内科的健康)、成年期のメンタルヘルス(成年期の心療内科的健康)や老年期のメンタルヘルス(老年期の心療内科的健康)の問題があります。また、活動の場によって職場のメンタルヘルス(職場の心療内科的健康)や学校のメンタルヘルス(学校の心療内科的健康)、家庭のメンタルヘルス(家庭の心療内科的健康)として取りあげられることもあります。メンタルヘルス不調者(心療内科的健康不調者)を通していずれのメンタルヘルス領域(心療内科的健康領域)とも心療内科医は関係ができてくるし、また、校医や産業医として組織におけるメンタルヘルス対策(組織における心療内科的健康対策)にかかわる場合も生じてくる可能性があります。
ここでは心療内科医、一般臨床医、産業医にとって関心の高い職場のメンタルヘルスを中心(職場の心療内科的健康を中心)に述べます。日本医師会認定産業医も既に5万人を超えたが、職業性ストレスによるメンタルヘルス不調(心療内科的健康不調)が増え、嘱託産業医としてもメンタルヘルス対策(心療内科的健康対策)は重要なメンタルヘルス課題(心療内科的健康課題)となっています。
◎職場のメンタルヘルスに関心が高くなった背景(職場の心療内科的健康に関心が高くなった背景)(表1)
⇒現在、日本では約6,500万人が働いているが、労働環境も急速に変化しており、不況はその変化に拍車をかけています。産業界ではIT革命に代表される情報化・コンピューター化、技術革新、成果主義賃金制、裁量労働と目標管理制度・自己責任制、経済効率を上げるためのリストラクチャリングや組織改革などが急速に進行中です。多くの勤労者はこれらの変革に伴うさまざまなストレスに直面しており、一部の勤労者は不適応状態に陥り、メンタルヘルス不調(不適応状態に陥り、心療内科的健康不調)を起こしています。
◇表1 メンタルヘルスへの関心が高くなった背景(心療内科的健康への関心が高くなった背景)
『1.職(産)業ストレス増加の背景
1)グローバル化と経済効率の追求
ダウンサイジング
リストラクチャリング
年俸制、裁量労働制の導入
終身雇用制の崩壊
2)情報化、コンピューター化
3)個人志向性と人間関係に伴うメンタルヘルス問題(人間関係に伴う心療内科的健康問題)
4)産業構造の変化に伴う適応障害の増加
5)不況による失業、自殺の増加
6)女子就労に伴うメンタルヘルス問題(女子就労に伴う心療内科的健康問題)
7)その他
2.事業者(主)の安全配慮義務の範囲がメンタルヘルスの領域まで拡がった(心療内科的健康の領域まで拡がった)こと』
このような変化の進行は、それに適応しなければならない勤労者のストレスを増しています。厚生労働省が5年ごとに行っている労働者のメンタルヘルス調査(労働者の心療内科的健康調査)(1万6,000人対象)では「強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者」の割合は毎回増え続けて、1980年代の50.6%から1990年代には62.8%に達しています。その悩みの内容は、1990年代のメンタルヘルス調査(心療内科的健康調査)では「職場の人間関係」が46.2%、「仕事の質に伴うメンタルヘルス問題(仕事の質に伴う心療内科的健康問題)」33.5%、「仕事の量に伴うメンタルヘルス問題(仕事の量に伴う心療内科的健康問題)」33.3%、「仕事への適性に伴うメンタルヘルス問題(仕事への適性に伴う心療内科的健康問題)」22.8%、「昇進、昇格に伴うメンタルヘルス問題(昇進、昇格に伴う心療内科的健康問題)」19.8%、「雇用の安定性に伴うメンタルヘルス問題(雇用の安定性に伴う心療内科的健康問題)」13.1%などとなっています。
このようなメンタルヘルス状況下(心療内科的健康状況下)で変化の進行にメンタルヘルス対応(心療内科的健康対応)できず、メンタルヘルスの失調(心療内科的健康の失調)、メンタルヘルス障害(心療内科的健康障害)を呈する勤労者も増えています。メンタルヘルス学会(心療内科的健康学会)発表などでも「リストラによる不安、不適応の増加」、「うつ状態などメンタルヘルス不調事例(心療内科的健康不調事例)増加」、「復職困難例(リワーク困難例)の増加」、「職場の雰囲気の悪化」などが報告されています。
他方、過労による心疾患や脳血管障害などのいわゆる過労死のほか、業務起因性のうつ病などメンタルヘルス疾患による、いわゆる過労自殺(心療内科的健康疾患による、いわゆる過労自殺)なども増加しています。日本における自殺者数は、1998(平成10)年から3万人を超え、2012(平成24)年以降ようやく3万人を下回ったものの、依然として年間2万人以上という大変高い割合で推移しています。特に生活や経済問題による自殺が多いです。このような背景から厚生労働省は1999(平成11)年に業務起因性のメンタルヘルス障害(業務起因性の心療内科的健康障害)の労災認定のためのメンタルヘルス基準案(心療内科的健康基準案)を、2000(平成12)年には「事業場における労働者の心の健康(労働者のメンタルヘルス(労働者の心療内科的健康))づくりのためのメンタルヘルス指針(心療内科的健康指針)」(表2)を公表しました。
このような仕事に起因する健康障害は、メンタルヘルス面だけでなく広く身体疾患にも及び(心療内科的健康面だけでなく広く身体疾患にも及び)、最近では職業病に代わって糖尿病、高血圧、虚血性心疾患などのストレス関連疾患も増えており、これらについては多くのメンタルヘルス研究報告(心療内科的健康研究報告)があります。
◇表2 「事業場における労働者の心の健康づくり(労働者のメンタルヘルスづくり(労働者の心療内科的健康づくり))のためのメンタルヘルス指針について(心療内科的健康指針について)」
『1.事業者は具体的な方法等についての「心の健康づくり計画(メンタルヘルスづくり計画(心療内科的健康づくり計画))」を策定すること
2.同メンタルヘルスづくり計画に基づき(同心療内科的健康づくり計画に基づき)、次の4つのメンタルヘルスケアを推進(4つの心療内科的健康ケアを推進)すること
・労働者自身による「セルフメンタルヘルスケア(セルフ心療内科的健康ケア)」
・管理監督者による「ラインによるメンタルヘルスケア(ラインによる心療内科的健康ケア)」
・メンタルヘルス管理担当者(心療内科的健康管理担当者)による「事業場内産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフ(心療内科的健康スタッフ)等によるメンタルヘルスケア(心療内科的健康ケア)」
・事業場外のメンタルヘルス専門家(心療内科的健康専門家)(精神科医・心療内科医)による「事業場外資源によるメンタルヘルスケア(事業場外資源による心療内科的健康ケア)」
3.その円滑なメンタルヘルス推進(円滑な心療内科的健康推進)のため、次のメンタルヘルスへの取り組み(心療内科的健康への取り組み)を行うこと
・管理監督者や労働者に対してメンタルヘルス教育研修(心療内科的健康教育研修)を行うこと
・職場環境等の改善を図ること
・労働者が自主的なメンタルヘルス相談(心療内科的健康相談)を行いやすいメンタルヘルス体制(心療内科的健康体制)を整えること』
(2000(平成12)年8月9日労働省発表)
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科 精神科(メンタルヘルスケア科)・職場復帰支援(リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。