ストレス社会で病んだ現代人について | 豊中市 千里中央駅直結の心療内科「杉浦こころのクリニック」

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Ⅳ.過重労働によるストレスとその対策

過重労働によるストレス

残業(時間外労働)時間や休日出勤が増えると、必然的に健康への悪影響が出てきます。厚生労働省の「過重労働による健康障害を防ぐために」によると、月100時間を超える残業や、2~6 か月平均の月の残業時間が80時間を超えると、健康障害のリスクが高まる とされています。

厚生労働省の「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」が1999年9月に発表されていますが、その後、企業における組織の再編や人員の削減等の実施、能力主義・成果主義に基づく賃金・処遇制度の導入等で、職場を取り巻く環境が変化してきたため、2008年12月から2009年3月までの間で、「職場における心理的負荷評価表の見直し等に関する検討会」が開催され、発表されています。

見直し前は、「出来事に伴う変化を評価するに当たっては、仕事の量、質、責任、職場の人的・物的環境、支援・協力体制等について検討することとするが、特に、恒常的な長時間労働は、精神障害発病の準備状態を形成する要因となる可能性が高いとされていることから、業務による心理的負荷の評価に当たっては十分考慮することとする。」と記載されていました。

今回の見直し検討によって、職場における具体的出来事に追加がなされ、「違法行為を強要された」「顧客や取引先から無理な注文を受けた」「達成困難なノルマが課された」「研修、会議等の参加を強要された」「複数名で担当していた業務を1人で担当するようになった」「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」などが、新たにストレス評価をする上での具体的出来事として加えられています。

過重労働対策

(1) 過重労働対策とは

長時間にわたる過重な労働は、疲労の蓄積をもたらす重要な要因と考えられ、さらには、脳疾患や心臓疾患の発症との関連性が強いという医学的知見が得られています。働くことにより、労働者が健康を損なうようなことがあってはならないものであり、当該医学的知見を踏まえると、労働者が疲労を回復することができないような長時間にわたる過重労働を排除していくとともに、労働者に疲労の蓄積を生じさせないようにするため、労働者の健康管理に係る措置を適切にすることが重要です。

ここでの過重労働対策とは、労働安全衛生法第66条の8及び66条の9に基づく、長時間労働者に対する面接指導等の措置をいい、詳細は、労働安全衛生規則第14条第1項第1号及び第52条の2ないし 52条の8に定められています。その行政解釈は「労働安全衛生法等の一部を改正する法律(労働安全衛生法関係)等の施行について」(平成18年2月24日付け基発第 0224003 号)に示されています。また、「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」(平成18年3月17日付け基発第 0317008 号)の別紙1の別添も参考となります。これらで定められている主なポイントは以下のとおりです。

  • 【1】労働安全衛生法第66条の8により、時間外・休日労働時聞が1ヶ月当たり100時間を超える長時間労働者であって、申出を行ったものについては、医師による面接指導が義務付けられています。
  • 【2】同法第66条の8に基づく面接指導は、本人の申し出によって行います。なお、この申し出は、時間外・休日労働の算定が行われてから概ね1ヶ月以内に行われるようにし、産業医は申し出を行うよう本人に推奨できます。
  • 【3】申し出から、概ね1ヶ月以内に医師による面接指導を行います。また、面接指導から概ね1ヶ月後に、本人の就業上の措置に関する意見を医師から聴取します。事業者は、この意見を勘案して、必要に応じて、労働時間の短縮等の措置を講じます。
  • 【4】 さらに、時間外・休日労働時間が1ヶ月当たり80時間を超えて疲労の蓄積が認められたり、健康上の不安を有している労働者、事業場で定めた基準に該当する労働者にも、面接指導等の必要な措置を実施することが求められています。事業場における基準は、衛生委員会等で審議した上で事業者が決定しますが、時間外・休日労働時聞が「1ヶ月100時間を超える労働者」と 「2ヶ月ないし6ヶ月の平均で1ヶ月あたり80時間を超える労働者」は全員を対象にすべきです。
  • 【5] 時間外・休日労働時聞が 1ヶ月当たり45時間を超える労働者がいる場合には、従業員の健康確保の観点から必要な措置を行うことが望まれます。
  • 【6】過重労働による健康障害を防止するためには、長時間労働にならないよう労働時間を管理することが必要です。時間外労働や休日労働を削減し、年次有給休暇の取得を推進する等の対策が望まれます。

(2) 過重労働対策の実施方法

厚生労働省から「過重労働による健康障害防止対策の手引き」が発行され、過重労働対策の実施方法や取組時期がまとめられていますので、参考にするとよいでしょう。

  • 【1】事業者による意思決定と方針の表明
    過重労働対策を成功させるためには、事業者が「過労死や過重労働による健康障害を生じさせない」という方針を決定し、これを表明することから始めます。方針の表明は、労働者の健康確保を最も重視しているという事業場トップの決意を知らせることとなります。

  • 【2】衛生委員会等の活用
    事業場全体が過重労働に対する問題意識を共有化したり、従業員の意見を過重労働対策に反映させたりするとともに、事業場の実態に即した制度づくりなどを調査審議するため、衛生委員会等を活用します。
  • 【3】過重労働対策推進計画
    事業場の安全衛生水準を継続的に向上させるために、PDCAサイクルを活用し、システムとして活動を展開することが重要です。
  • 【4】健康確保のための体制の整備と定期健康診断の活用
    (健康確保の徹底)
    過重労働対策を進めていくためには、産業医をはじめとする産業保健スタッフが積極的に対策を推進する体制の整備が重要です。
    また、定期健康診断には、過重労働による健康障害防止に関する項目が含まれています。若年齢者には医師の判断で省略できるものもありますが、必要な場合には省略 しないことが望まれます。有所見者の就業上の意見聴取に当たっては、過重労働対策 の観点の意見を含ませることが望ましいです。有所見者については保健指導の実施が望まれます。また、日常的な自己管理の徹底、THP の活用、肥満防止や禁煙、睡眠時間の確保等も有効です。さらに、前述の面接指導等を確実に実施することが必要です。
  • 【5】その他
    過重労働対策のためには、労働時間の把握が重要ですが、勤務の不規則性、出張の有無、交代勤務や深夜勤務の状況も把握することが望まれます。また、本来は、労働 時間そのものの縮減を目指すことが重要であり、「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」の別紙1の別添に示されている事業者が講ずべき措置として、 時間外・休日労働時間の削減、年次有給休暇の取得、労働時間等の設置の改善なども重要です。

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