疼痛性障害は、苦痛や社会的、職業的、その他重要な機能領域における障害を引き起こすほど重度の疼痛が、1カ所以上の解剖学的部位に生じるものです。精神的要因が症状の発現、重症度、悪化、持続に支配的役割を果たしているように思われますが、疼痛は意図的に起こしたり見せかけたりしたものではないです。患者によっては、急性疼痛の最初の刺激となったものを思い出す人もいます。診断は病歴に基づいて行います。治療は一貫した支持的な医師・患者関係を確立することから始まります。精神療法も有益なことがあります。
精神的要因の支配下にある慢性疼痛を有する人々の割合は不明です。しかしながら、疹痛が「全て患者様の頭の中だけ」で作り出されることはまれです。痛みの統覚には感覚的および情動的要因が関与しています。
精神的要因により支配される疼痛は気分障害および不安障害にもよくみられますが、疼痛性障害では疼痛が主訴となります。痛みは身体のあらゆる部分で生じえますが、背部、頭部、腹部、および胸部が最も一般的です。疼痛は急性の場合もあれば慢性(6カ月以上)の場合もあります。基礎的な身体疾患または損傷が疼痛の原因となっていることもありますが、その重症度および持続期間や障害の程度については説明がつきません。
診断は、疼痛とその重症度、持続期間、および障害の程度を適切に説明する身体疾患を除外した上で、病歴に基づいてなされます。精神的または社会的ストレス因子が見つかることで、この障害が説明できる場合もあります。
徹底的な医学的評価を行い、その後、強く励ますだけで十分な場合もあります。ときには、明らかな精神的または社会的ストレス因子との関係を共感的に指摘することが効を奏する場合もあります。しかし、多くの患者様では問題が慢性化し、治療は非常に困難です。患者様はしばしば自分の問題を心理社会的ストレスと結びつけるのを好まず、精神療法を拒絶するのが典型です。そうした方は治癒したいという明らかな欲求から多くの医師を受診するため、オピオイド類やベンゾジアゼピン類への依存性が生じる危険性があります。不必要で費用のかかる、または危険な検査や処置から患者を守る一方で、新しい重大な身体疾患の可能性に常に注意を怠らない、思いやりの深い共感的な医師が詳細な再評価を定期的に行うことが、長期的な痛みの軽減にとって最も大きな希望となります。