摂食障害には「体型をやせて保っていなければ、自分自身の存在価値を保てない」という観念に囚われた結果、やせすぎた状態になるもの(神経性無食欲症、いわゆる「拒食症」anorexia nervosa : AN)と、やせようとして抑え続けた摂食がどこかの時点で、反動で抑えきれなくなり、食べ過ぎてしまうもの(神経性大食症、いわゆる「過食症」 bulimia nervosa : BN)とがあります。またBNの場合には、気分変動が先行し、嫌な気分を紛らわすために、「やけ食い」 のように、過食してしまうパターンもあります。
「体重や体型をやせて保つことにしか価値がない」という場合には、やせればやせるほど食べ物や体重、体型にますます心が因われ、果てしなくやせ続け、またある場合にはどこかで反動で過食し、病的な状態となります。
すなわち「摂食障害」とは食欲の問題から食べられなくなったり、食べ過ぎたりする病態で はなく、症状の根底にある「自分自身の価値がわからない」という実存的な聞いへのかりそめの解決として存在する状態です。
摂食障害の本質は「やせていなければ自分の存在価値を保てない」という精神病理にありますが、これを客観的に証明することはできません。患者様ご本人がそれを意識し言語的に表明すればわかりやすいですが、時には患者様ご自身にもはっきりとはわからない、わかっていてもいいたくないということもあります。
初診時や治療初期には原因を詮索せず「栄養摂取が足りず、低栄養、低体重、低代謝の状態となった場合」に起きうる障害、症状を説明することが重要です。低栄養の状態となる理由がなんであれ、結果として起きる身体的な影響は基本的には変わらないです。
ANの場合、自覚症状でかなり高率に認められるものが「寒さ」です。これは、るいそうが進行する過程で低代謝、低体温となることで起きます。とくに外気温が低くなる時期に自覚されやすいです。また血糖値が低くなる夜中から早朝にかけて、中途覚醒がみられることも珍しくありません。
BNの場合、激しい過食、意図的な嘔吐などの結果、消化器症状、嘔吐による頭痛、胃液逆流によるう歯なども認められます。