子どもたちのメンタルヘルスについて(その4) | 豊中市 千里中央駅直結の心療内科「杉浦こころのクリニック」

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子どもたちのメンタルヘルスについて

Ⅳ.児童期の統合失調症

統合失調症は10歳以下ではきわめて稀でありますが、10歳を過ぎて中学生の年齢になると決して稀な障害ではありません。児童期発症例は急性発症よりも亜急性ないしは潜伏性発症が多いといわれており、そのような症例は数か月から数年に及ぶ前駆期を経て顕在化します。この前駆期における症状は、不登校、強迫症状、うつ状態、摂食障害、行為障害、チックなど多岐にわたり、統合失調症が顕在化した後に前駆症状であったと気づかれることも少なくありません。

●診断

統合失調症の診断は国際的な診断基準であるDSM-Ⅳ(1994)あるいはICD-10(1993)によりますが、児童を対象とした場合でも成人と同一の診断基準を用いています。上記の診断基準による統合失調症の診断には幻覚あるいは妄想の存在が重要な要素となっているため、臨床経過、行動や会話のまとまりのなさ、などから統合失調症が強く疑われる場合でも、国際的な診断基準を適用すると統合失調症とは診断できない場合が多いです。そのような場合には統合失調症スペクトラム障害として統合失調症に準じて慎重に対応し経過を追う必要があります。また、たとえ児童期発症例と診断された場合でも、①幻視のみられるものがある、②幻聴内容が不鮮明なものや一過性のものが多い、③妄想構築は稀である、④感情易変性を示すものが多い、⑤強迫行為を示すものが多い、など成人発症例とは異なった特徴をもちます。

●治療

治療は薬物療法と心理社会的治療に大別されます。薬物療法では成人発症の統合失調症に対するアルゴリズムを参考に施行されることが一般的です。すなわち、従来のハロペリドールや塩酸クロルプロマジンなどの定型抗精神病薬ではなく、リスペリドン、フマル酸クエチアピン、オランザピン、塩酸ぺロスピロンの4つの非定型抗精神病薬が児童期発症例でも第一選択薬となっています。また児童・思春期の患者で注意するべきことは、前駆期または発症初期の段階でうつ状態が前面に出ているときに、抗うつ薬、特に三環系抗うつ薬(塩酸アミトリプチリン、塩酸イミプラミン、塩酸クロミプラミン)を安易に使用すると急激な幻覚・妄想状態を惹起することがある点です。児童・思春期におけるうつ状態に対しては、薬物療法の前にまず病態を慎重に見極めることが重要です。

心理社会的治療は主に、心理療法と社会資源の活用に分けられます。心理療法には、混乱している親子双方をしっかりと支えることから始まり、患児の生育歴の聴取やご両親への障害の説明などのプロセスが含まれます。また急性期を乗り越えた後には、彼らが学齢期にあるために教育が大きな問題となって浮上します。この点は居住地によって事情は若干異なるため、各地域の社会的な資源を探りながら患児の病状に合わせて適切に対処するべきです。

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