2018年02月09日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の6回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】●職場復帰のため(リワークのため)の四つのステージ
どのようなタイミングで職場復帰をする(リワークをする)のかは休業者にとって、非常に重要な問題です。これはうつ病などメンタルヘルス疾患に限らず、どんな病気やけがでも共通のポイントになると言えるでしょう。ここでは、わかりやすく、肉離れにより足を痛めてしまったマラソン選手を例に取ってみましょう。マラソン選手が肉離れを起こしてしまった場合、負傷後すぐにトレーニングを再開してしまえば、けがの具合はどんどん悪くなっていきます。また、肉離れが治癒をした後、すぐにきついトレーニングを開始すれば、肉離れを再発することが想像できます。しかし、選手の気持ちとしてはどうでしょうか?大きな大会が目の前にあれば、多少痛みが残っていてもコーチに「私の足はだいぶ良くなりましたから、そろそろ本格的な練習をさせてください」と嘘をつくこともあるでしょう。また、何とか大会で好成績を残してほしいと願うコーチも、「あなたが大丈夫というなら、そろそろ練習を再開しましょう」と言って、練習に送り出してしまうかもしれません。そうなると、肉離れを再発して、場合によっては選手生命にまで影響を及ぼす危険性すら生じてくるのです。
これはうつ病などメンタルヘルス疾患の場合でも同じことです。うつ病で会社を長期休業すれば、収入が減ってしまいますし、会社内の出世レースでも遅れをとってしまうことにもなります。そうなれば、例えメンタルヘルス不調の回復状況が不十分でも、主治医に「家にいると仕事のことが気になってしまい、ゆっくり休めません。だから職場にいた方が落ち着きます」「そろそろ復職(そろそろリワーク)をしないと会社をクビになってしまうかもしれません」と話し、実際の職場の状況をよく知らない主治医は、患者様の熱意(実際は焦燥感なのですが……)に負けて「職場復帰可能(リワーク可能)」という復職診断書(リワーク診断書)を発行してしまうことがあるのです。そして猫の手も借りたいくらい忙しい職場では、その主治医の復職診断書(主治医のリワーク診断書)を待っていましたとばかりに患者様の職場復帰を歓迎(リワークを歓迎)し、職場復帰初日(リワーク初日)から次々に休んでいた分の仕事を任せてしまい、結果的に短期間で再度の休業に追い込んでしまうのです。
マラソン選手が肉離れをした際に、まずはじっくり療養して、その後、十分な回復を待ってから、少しずつウォーキングやジョギングを開始し、専門的な知識を持ったトレーナーの指導のもとで、次第に負荷を上げていくことが重要であることぐらい誰にもわかりそうなものです。うつなどのメンタルヘルス疾患もこれと全く同じと言えるのです。もし、うつなどのメンタルヘルス疾患になってしまったら、まずは主治医の指示に従い、じっくりとメンタルヘルス疾患の療養をし、その後、職場復帰に関し(リワークに関し)てメンタルヘルスの専門的な知識を持つ復職支援スタッフ(リワークスタッフ)のもとで徐々に職場復帰(徐々にリワーク)のための復職支援プログラム(リワークプログラム)などリハビリを行い、職場環境も十分に調整した上で職場復帰を果たす(リワークを果たす)べきです。そして、職場復帰後(リワーク後)もうつ病などのメンタルヘルス疾患の再発の兆候に注意をしながら、少しずつ本来の業務に復職をしていく(リワークをしていく)ことが、理想的な職場復帰(理想的なリワーク)であると言えるでしょう。
このように見てみると、うつ病などメンタルヘルス不調からの職場復帰に関しては、いくつかのステージ(リワークに関しては、いくつかのステージ)があることがおわかりになると思います。これから、そのステージを四つに分けて、順番に説明をしていくことにしましょう。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。