ホーム > 疾患・症状 > 精神症状(イライラする・怒りっぽい)
A3. 「イライラする・怒りっぽい」状態とは、通常、状況や物事が自分の思い通りにいっていない時にこころの中に生じる不快感のことを指します。
イライラして怒りっぽい人は、何となく気分が落ち着かず、周囲からのちょっとした言葉や音などに過敏に反応して、不機嫌そうな声で返事をしたり、相手を無視したり怒鳴りつけたりします。ほとんどの場合、人がイライラしたり、怒りっぽくなったりするのは、何らかのストレスを抱えていて、しかもストレスがなかなか解消しなかったり、自分がそのようなストレスを抱えなければならない理由について納得できなかったりすることが原因です。
簡単な例として、たとえば夏の暑い日、冷房が故障した電車の中に何の説明もないまま長時間閉じ込められていたら、誰でもイライラします。
引きこもりの若者がイライラしやすいのも、多くの場合、自らの現状に対して慢性的なストレス(無力感)と「こうなったのは親の責任」などといった納得がいかない気持ちを抱えているからです。イライラや怒りっぽさは、明らかなストレスが存在していなくても、さまざまな精神障害に付随する症状としてみられることもあります。精神医学では、ささいなことをきっかけにして周囲に対して不機嫌な態度で反応しやすい状態のことを「易刺激性」、特に怒りっぽい状態のことを「易怒性」などと呼びます。
易刺激性や易怒性は、ほとんどすべての精神障害においてみられます。たとえば認知症や脳血管障害、脳腫瘍などの脳器質性精神障害で、急に易怒性を呈することがあります。
アルコール・薬物依存症では、アルコールや薬物の効果が切れてきた時や、覚せい剤など神経を興奮させる薬物を摂取した後に、易刺激性が強まることがあります。統合失調症でも、幻聴や妄想のせいで易怒性が高まることがあります。双極性障害(躁うつ病)の躁状態では特に易刺激性が目立ち、患者様のいうことに反論しようものなら、すぐに怒りだしてしまいます。まれですが、うつ状態に対して投与された抗うつ薬の作用で、易刺激性が生み出されることもあります。
ほかに、強迫性障害で思い通りに手洗い等の強迫行為ができない時、解離性障害で穏やかな人格に攻撃的な人格が入れ替わる時、摂食障害で体重増加や過食嘔吐が止まらない時や、対人関係が不器用なパーソナリティ障害や精神遅滞などでもみられます。女性の場合、生理の周期でイライラ感がひどくなることもあります(月経前症候群)。
【会社員Oさん(35歳、男性)の場合】
うつ病の薬を飲み始めてから調子がずいぶんよくなりました。うつのときと違って疲労を感じることなく残業も続けられました。誘われた飲み会には必ず参加し、二次会にも欠かさずつきあいました。気前よく部下におごることも増えました。以前にはなかったぐらいよくしゃべり、気分も爽快でした。睡眠時間も3時間もあれば、ばりばり働くことができ、はっとするような素晴らしいアイデアが次々と浮かび、もう「うつ」は完全に治ったと思ったのです。他の人からも、病気の前よりも元気になって、しゃべりすぎるぐらいだとよく言われました。
ところが、このような状態が続いた数カ月後、私はまた、朝ベッドから起き上がることもできなくなってしまいました。
薬をもらえば、また元気になると思って、以前に通っていた病院に行ったのです。そこで、これまでの経過を話したら、「双極性障害」の可能性があると言われました。私自身、気分が絶好調のときは、これが病気だなんて思いもしませんでした。今は、薬をきっちり飲むようにしていますので、大きな気分の波はかなり治まっています。