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パーソナリティ障害(境界性/自己愛性)について(その2)
診断
境界性パーソナリティ障害は、ICD-10 で、は情緒不安定性人格障害の亜型のーつとされ、また自己愛性パーソナリティ障害は独立したカテゴリーは与えられていないです。このような背景もあり、わが国の日常臨床では、これらの両パーソナリティ障害の診断をくだす際にDSM-5 がよく用いられます。
境界性パーソナリティ障害の診断基準(DSM-5)
対人関係、自己像、感情などの不安定および著しい衝動性の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになります。次のうち5つ(またはそれ以上)によって示されます。
- 現実に、または想像の中で見捨てられることを避けようとするなりふりかまわない努力。
- 理想化と脱価値化との両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる不安定で激しい対人関係様式。
- 同一性障害:著明で持続的な不安定な自己像や自己観。
- 自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域にわたるもの(浪費、性行為、物質濫用、無謀な運転、むちゃ食いなど)。
- 自殺の行為、そぶり、脅し、または自傷行為の繰り返し。
- 顕著な気分反応性による感情不安定性(例:通常は 2~3時間持続し、2~3日以上持続することはまれな強い気分変調、いらいら、または不安)。
- 慢性的な空虚感。
- 不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難(例:しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いのけんかを繰り返す)。
- 一過性のストレス関連性の妄想様観念、または重篤な解離性症状。
自己愛性パーソナリティ障害(DSM-5)
誇大性(空想、または行動における)、賞賛されたいという欲求、共感の欠如の広範な様式で、成人期早期に始まり、種々の状況で明らかになります。
次のうち5つ(またはそれ以上)によって示されます。
- 自己の重要性に関する誇大な感覚(例:業績や才能を誇張する、十分な業績がないにもかかわらず優れていると認められることを期待します)。
- 限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれています。
- 自分が特別であり、独特であり、ほかの特別なまたは地位の高い人達に(または施設で)しか理解されない、または関係があるべきだ、と信じています。
- 過剰な賞賛を求めます。
- 特権意識、つまり特別有利な取り計らい、または自分の期待に自動的に従うことを理由なく期待します。
- 対人関係で相手を不当に利用します。つまり自分自身の目的を達成するために他人を利用します。
- 共感の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしないです。
- しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込みます。
- 尊大で倣慢な行動または態度。
治療法
境界性パーソナリティ障害には認知行動療法の一つである、弁証法的行動療法(DBT)が有効であるといわれていますが、自己愛性パーソナリティ障害については確立した治療法がないです。これらのパーソナリティ障害にうつ病やパニック障害などの障害が合併することもあり、そうした場合には薬物療法も試みるべきです。
経過および予後
境界性パーソナリティ障害で最も注意しなければいけないのは自殺です。衝動性や対人関係の激しさは生涯にわたり続くこともありますが、治療的介入を受けた人はそれらが1年以内から改善し始めることもしばしばあります。また、年齢を重ねると衝動性や対人関係の激しさは軽減するという報告もあります。
自己愛性パーソナリティ障害の経過や予後に関しては、定まった見解が得られていません。