2018年07月24日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の78回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖難治性うつ病勤労者の復職支援について(リワークについて)〗
厚生労働省の調査では、うつ病勤労者などメンタルヘルス不調者が増加しており、2014(平成26)年には1999(平成11)年の約2.5倍に増えているとされます。メンタルヘルス科(精神科・心療内科)への敷居が下がったこと、操作的診断基準が普及したこと、新規抗うつ薬の上市と同時にメンタルヘルス疾患啓発が進んだことなどがその一因だとされます。さらに、厚生労働省の2015(平成27)年の調査においては、うつ病などのメンタルヘルス不調を感じている人の13.3%が会社を休職しており、その後1割のうつ病勤労者が結果的に退職しているという現状が明らかとなりました。さらには、労災認定も増えており、厚生労働省によると、2014(平成26)年度に、仕事のストレスなどでメンタルヘルス疾患を発症し、労災申請した人は、1,456人にのぼり、497人が認定されました。うつ病などメンタルヘルス不調の治療は薬物療法のみならず精神療法、心理社会的治療、環境調整なども重要であるため個別の対応が必要なことが多いです。また、ある一定の割合でうつ状態などのメンタルヘルス不調が遷延する事例がみられます。以下では、うつ状態などメンタルヘルス不調が遷延した難治性うつ病勤労者の復職に関して(リワークに関して)現時点でできる対応について述べたいと思います。
◎わが国のうつ病勤労者などメンタルヘルス不調者の復職をめぐる課題(リワークをめぐる課題)
⇒うつ病勤労者などのメンタルヘルス不調者の復職に関する調査(リワークに関する調査)によると、メンタルヘルス専門医療機関のメンタルヘルス専門医(精神科医・心療内科医)の約半数が、①復職可能な状態かの判断(リワーク可能な状態かの判断)が難しい、②復職しても短期間で再休職(リワークしても短期間で再休職)してしまう、③不十分なメンタルヘルス不調からの回復状態だが本人や家族の強い復職希望(リワーク希望)がある、という3つの点で対応に悩んでいます。
上記うつ病勤労者などメンタルヘルス不調の者が復職する際(リワークする際)には主治医(精神科医師・心療内科医師)による「復職可能(リワーク可能)」な旨を記載された復職可能の診断書(リワーク可能の診断書)が必要であるが、復職可能の判断基準(リワーク可能の判断基準)を示したものはないです。厚生労働省が発表している「心の健康問題(メンタルヘルス不調)により休業した労働者の職場復帰支援(リワーク支援)の手引き」(復職ガイドライン(リワークガイドライン))のなかでも、職場復帰可否(リワーク可否)について定型的な復職可否の判断基準(定型的なリワーク可否の判断基準)を示すことは困難であり、個々のケースに応じて総合的な復職可否の判断(総合的なリワーク可否の判断)を行わなければならないと記載されており、復職可能の判断(リワーク可能の判断)には個別の要因を加味して臨床的な復職可能の判断(臨床的なリワーク可能の判断)を下す必要があるといえます。
また、うつ状態などのメンタルヘルス不調の改善が不十分にもかかわらず、ある日突然家族が本人の受診に同伴してきて、不十分なメンタルヘルス不調の回復状態を承知のうえで強く復職を希望する(強くリワークを希望する)ことも散見されます。その際に患者様の家族の勢いに押され「復職可能」の診断書を記載する(「リワーク可能」の診断書を記載する)こともあります。一方で産業精神保健現場では、そのようなメンタルヘルス科専門医(心療内科医・精神科医)の復職可能な旨の診断書(リワーク可能な旨の診断書)に対して懐疑的な産業医もいます。もちろんそのようなメンタルヘルス科専門医師(心療内科医師・精神科医師)の事情に理解を示したうえで産業医活動を行っている産業医もいるが多くはないと思われます。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。