2018年07月21日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の77回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】●職場復帰支援(リワーク支援)(Ⅱ)
◎職場との連携の重要性
職場の産業保健スタッフと主治医(精神科医・心療内科医)側が、勤労者の罹患しているメンタルヘルス疾患の病態について共通の認識を持つことは、メンタルヘルス疾患の再発・再燃の予防の観点からきわめて重要です。
たとえば、うつ病などメンタルヘルス疾患にアルコール依存症、パーソナリティ障害や自閉スペクトラム症などが合併している事例では、前景に立っているうつ状態などメンタルヘルス不調よりも、背景にあるそれらの疾病が根深いためしばしばメンタルヘルス疾患が難治例、再発例となりやすいです。さらに、就労パフォーマンス低下をきたす要因が、勤労者を取り巻く作業環境よりもむしろ個別のメンタルヘルス疾患の要素に強く認められることが多く、職場での作業環境調整や就労配慮によっても解決されないことが多いです。こうしたケースでは、まず根本となるメンタルヘルス疾患の治療を優先したほうが、労働者および企業側双方にとって好ましいことが多いです。
主治医(精神科医師・心療内科医師)側が勤労者の罹っているメンタルヘルス疾患の見立てを企業の産業保健スタッフに正確に伝えることは、職場での就労配慮やメンタルヘルス疾患の予後の改善の点からきわめて重要です。しかし、ある調査によれば、患者様が難治性うつ病などメンタルヘルス障害の場合89%のメンタルヘルス専門医(心療内科医・精神科医)は診断書に「うつ病」または「うつ状態」と記載するのみで、メンタルヘルス障害の重症度については明記していなかったです。また、うつ病などメンタルヘルス障害にパーソナリティ障害を合併する例では、85%のメンタルヘルス専門医師(心療内科医師・精神科医師)はうつ病とだけ診断書に明記し、その背景にあるパーソナリティ障害には触れていなかったです。主治医側の見立てやアドバイスを産業保健スタッフに正確に伝えることは、治療そのものと同じぐらいに、勤労者の職場復帰を成功(リワークを成功)させるために重要な要素であり、そうした連携は今後の課題でもあります。
◎ライフイベントに着目した職域での配慮
ライフイベントとうつ病などメンタルヘルス不調は再発・再燃においても関連が認められています。職域におけるライフイベントでメンタルヘルス不調の再発・再燃に繋がるリスクが高いものには、「新しい業務や仕事に就くこと」「職場環境の変化」「昇進」「失業」などがあげられます。したがって、うつ病などのメンタルヘルス不調の持続治療期や維持療法期においては、このようなライフイベントをなるべく回避するのがよいです。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。