2018年06月13日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の59回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】●日常生活で過重なストレスを防ぐ方法(Ⅱ)
◎4色ボールペンで予定を整理しよう
うつ病などメンタルヘルス疾患の方に「まじめ・几帳面で仕事熱心な特徴」が見られることはよく知られていますが、その反面で「何事も重要だと思ってしまい、仕事や私生活での優先順位の付け方があまり得意ではない」という面もよく見られます。例えば、「自分でやらないといけない仕事でも、部下に任せることができる仕事」と「どうしても自分がやらなければならない重要な仕事」をどちらも「自分がすべき仕事」と捉えてしまい、時間がない状況でも、徹夜をして何とかやり遂げなければと自分を追い詰めてしまうのです。
私たちの日ごろの予定は、緊急性と重要性という二つの要素により、
①緊急性も重要性も高い予定(=会社にも自分にも大切な予定)
『何よりも最優先に取り組まなければならない予定で、自分にとっても職場にとっても重要な予定です。
顧客からのクレームや、会社に重大な影響を及ぼす可能性のある急ぎの書類作成などがこれに当たります。』
②緊急性は低いが重要性は高い予定(=自分にとって本当に大切な予定)
『今すぐにやらなければならない予定ではないのですが、将来を見据えたときに会社の役に立ったり、自分を成長させたりするための予定です。
職場で言えば、業務効率を良くする案を考えたり、来期に向けた自己目標を熟考したり、人材育成をすることなどがこれに当たります。また、職場以外にも自分の能力を高めるための英会話のレッスンや、自分が尊敬する人との食事の予定などもこれに当たります。』
③緊急性は高いが重要性は低い予定(=会社や他人にとって大切な予定)
『自分にとっては重要ではないけれども、職場にとっては重要な予定です。
職場で言えば、月末までに処理をしなければならない出張旅費の精算や、自分には発言権のない会議などがこれに当たります。』
④緊急性も重要性も低い予定(=やってもやらなくてもいい予定)
『自分にとっても職場にとっても、重要ではない予定です。暇つぶしのための予定や付き合いで参加する飲み会などがこれに当たります。』
に分類することができます。
この中で①や③の緊急性の高い仕事ばかりに時間を割かれてしまうと、自分の将来の成長にとって重要な②の予定を入れることができず、常に緊急性の高い仕事に追われて、自分自身が消耗してしまい、うつ病などメンタルヘルス疾患の再発という結果になってしまうことも少なくありません。つまり、うつ病などのメンタルヘルス不調になりやすい、まじめで几帳面、かつ仕事熱心な方の場合、仕事の緊急性ばかりに目を奪われてしまい、この重要性の視点がおろそかにしてしまいがちなのです。
しかし、重要性を感じつつも、目の前の仕事に追われ、つい②の予定を後回しにしてしまうと、当面の処理をしているうちに時間が経過してしまい、気づくと来期の目標設定をする時期になってしまいます。そうなると、熟考する間もなく、あまり計画性のない目標を設定し、結果的にはそれが達成できずに大きなストレスになってしまうという悪循環につながってしまいます。
それは業務効率改善のための試案でも、部下の育成でも、自らのスキルアップのための英会話のレッスンでも同じことで、ついつい後回しにしてしまうことで、将来的にそれが必要になったときに自分を追い詰めることになってしまうのです。つまり、いつかやらなければならないと思っている間に、いつのまにか②から①に分類される予定になってしまうことがよくあるのです。
そこで、上記うつ病などメンタルヘルス疾患の再発予防にお勧めをしているのが、4色ボールペンを使ったスケジュール管理術です。自らの手帳に予定を記入する際に、予定を上記で紹介した四つのカテゴリーに分類して記載をするのです。①の緊急性も重要性も高い予定を「赤」、②の緊急性は低いが重要性は高い予定を「緑」、③の緊急性は高いが重要性は低い予定を「青」、④の緊急性も重要性も低い予定を「黒」で記入してみてください。
4色ボールペンを使ったことがある方であればおわかりだと思いますが、多くの方は黒や青色のインクが早く消費され、緑が最後まで残ってしまう方がほとんどでしょう。そこで、①の予定は目立つように赤、そして一番意識していただきたい②の予定を緑、わざわざ意識しなくても消費できる青や黒は自分にとって重要ではない③と④の予定に用いるのです。
そして自分の中でできる限り、緑を多く使う(=自分にとって重要なことに時間を使う)ことを意識して、スケジュール管理をしていくことで、目の前の緊急事のみに捉われず、広い視点でゆとりをもった行動が可能となり、ストレスと上手に付き合っていけるようになるのです。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。