ホーム > 疾患・症状 > 生活・行動面の変化(行動の変化)
A13.こうした行動の変化の背景には、しばしば認知機能障害といわれる症状が存在します。認知機能障害とは、認知症でみられる記憶の障害のほかにも、注意や遂行機能の障害など様々なタイプがあります。遂行機能とは、何かをしようとして計画を立案し、確実に実行し、何か予期せぬ出来事が起こった場合にも柔軟に対応する能力を指します。
こころの病気のうち、とくに統合失調症には認知機能障害が多く存在し、その日常生活や社会生活に大きな影響をおよぼすことが知られています。様々なタイプの認知機能のうちで、注意、記憶、作業記憶(何かを実行するために一時的に保持しておく記憶;電話をかけるために電話帳にある電話番号を憶える)、遂行機能にとくに顕著な障害が認められていますが、個人によるばらつきも大きいです。約85%の患者様に何らかの認知機能障害がみられます。発症早期から認められ、発症後の進展はゆるやかで、発症してから治療を受けるまでの期聞が短いほど認知機能障害は軽度であることが知られています。よく薬のせいではないかと心配される場合もありますが、適切な薬の種類および量であれば、認知機能にはむしろ改善する効果があることが報告されています。ただし、多くの種類の薬を併用すること(多剤併用)や量が多すぎると認知機能を低下させてしまうことがありますので、薬の量が多いと感じられる場合は、主治医とよく相談することが重要です。
統合失調症ばかりでなく、うつ病などの気分障害でも認知機能障害が認められることが知られています。遂行機能障害が比較的強いという報告もありますが、まだまだはっきりしたことはわかっていません。また、気分の状態が改善するとともに認知機能が回復する場合もありますが、しばしば気分が改善しても認知機能障害が残存し、日常生活行動や復職の妨げになる場合があります。高齢者の場合、こうした認知機能障害がみられると、思わず認知症になったと早合点される場合もありますが、うつ病でもこうした症状が認められますのでご注意ください。