2018年09月13日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の102回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖リワーク(Re-Work)とは?〗(Ⅻ)
◎試し出勤制度❷
⇒復職支援手引き(リワーク手引き)では、「試し出勤等」を、①模擬出勤、②通勤訓練、③試し出勤の3つに分類し、「この制度の導入に当たっては、この間の処遇や災害が生じた場合の対応、人事労務管理上の位置づけ等について、あらかじめ労使間で十分に検討しておくとともに、一定のルールを定めておく必要がある。なお、作業について使用者が指示を与えたり、作業内容が業務(職務)に当たる場合などには、労働基準法等が適用される場合があることや賃金等について合理的な処遇を行うべきことに留意する必要がある。また、この制度の運用に当たっては、産業医等も含めてその必要性を検討するとともに、主治医(精神科医・心療内科医)から試し出勤等を行うことが本人の療養を進める上での支障とならないとの判断を受けることが必要である。さらに、これらの制度が事業場側の都合でなく労働者の職場復帰(労働者のリワーク)をスムースに行うことを目的として運用されるよう留意すべきである。特に③の試し出勤については、具体的な職場復帰決定(リワーク決定)の手続きの前に、職場復帰可能(リワーク可能)の判断等を目的として行うものであることを踏まえ、職場復帰可能の判断(リワーク可能の判断)等の目的を達成するために必要な時間帯・態様・時期・期間等に限るべきであり、いたずらに長期にわたることは避けること」と述べています。また、平成24年には、試し出勤において、賃金の支払い対象となる可能性があることが、改めて通達で明示されました。
「試し出勤」を、メンタルヘルス症状や生活リズムはもとより、業務遂行能力についてもある程度の回復が見てとれる段階にまで至っている労働者が、職場復帰にあたって(リワークにあたって)出勤や勤務に関する感触を確かめ、上司や同僚もどの程度の業務をこなせそうかの見通しを立てるといった、文字通りの「試し」あるいは練習の期間とした場合、以下の点に留意が必要です。
まず、通勤や作業中の事故等の補償、作業の扱いに関する事項です。前者については特別な保険に加入している例、後者については、通常の就業とは別の枠で一定の賃金を支払っている例があります。いずれも、労使の協議等により定め、書面化して、事業場内に周知しておくことが不可欠です。
次に、仮に「試し出勤」制度を設けたとしても、休業した全ての労働者に職場復帰前(リワーク前)に「試し出勤」を課すことはできないことです。「試し出勤」制度を運用するためには、以下の3つの要件が全て満たされる必要があるとされています。
・本人が主体的に参加する意思を有していること。
・主治医(精神科医師・心療内科医師)が了解をしていること。
・産業医が関与していること。
また、試し出勤の期間(特に上限)を決めておくことも重要です。試し出勤の目的を上記のように定めると、自ずとおおよその期間が決まってくるでしょう。通常は1ヵ月程度であり、半年以上となるような長期間は適切でないと考えられます。この期間の上限を過ぎても、勤務状況が安定せず職場復帰およびその後の継続的な勤務の見通し(リワークおよびその後の継続的な勤務の見通し)が立ちにくい場合には、本人と職場関係者、産業保健職が話し合いを行い、再休業とする規定も必要でしょう。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。