2018年06月12日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の58回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】●日常生活で過重なストレスを防ぐ方法(Ⅰ)
◎ストレスマグネチュードに注意しよう
一般的に離婚や借金など嫌な変化はストレス(疲労)と捉えられがちですが、実は昇進や妻の妊娠などのおめでたい変化も、人間にとっては大きなストレスとなるのです。ここでは、アメリカの心理学者ホームズとレイが作成した「職場と家庭のストレスの蓄積モデル(社会的再適応評価尺度)」というものを紹介することにしましょう。
この尺度は、結婚を50、配偶者の死を100として、ある生活上のストレスイベントが起きてから、もう一度、もとの社会適応を取り戻すのに必要な時間を調査結果により求めたものです。この得点が高い生活上のストレスイベントほど、もとの生活に戻るまでに時間がかかる大きなストレスイベントであるということになり、私たちメンタルヘルス専門医(精神科医・心療内科医)はこれを「ストレスマグネチュード」と呼び、生活におけるストレスの大きさの指標として用いています。これを見ると、妊娠や昇進が大きなストレスイベントとなっていることがおわかりいただけるでしょう。一般的には、この社会的再適応評価尺度において、過去1年間に体験した生活上のストレスマグネチュードの合計点が200~299点であれば、次の年にメンタルヘルスを崩す可能性が50%、300点以上であれば、メンタルヘルスを崩す可能性が80%以上の確率であるとされています。
だから、日常生活における変化に敏感になり、ストレスマグネチュードをため込まないことを意識することが重要なのです。例えば、社宅で暮らしていた夫婦に妊娠と昇進が同時に起こったとき(ストレスマグネチュードは40+29=69点)、それならこれを契機に家を建てて引っ越してしまおうと考えることはよくあります。しかしそうしてしまうと、妊娠と昇進に加え、転居と多額の借金という大きなストレスを抱えることになります(ストレスマグネチュードは69+20+31=120点)。あえて多くの変化を重ねてしまうよりは、生活が落ち着いてから次の変化に取り組むように心がけましょう。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。