2018年04月10日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の34回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】●メンタルヘルスのアンチエイジング
多くの方は、自分のルールには何か合理的な理由があるかのような錯覚に陥っています。例えばニュースはNHKで見ると決めている人が、民放のニュースを見たらどうなるでしょうか?もちろん、番組編成やアナウンサーが違いますから、多少はそれによって得られる情報や感じ方は異なると思いますが、それは本人が思っているほど大きな違いでないことが多いのです。ひょっとしたら、たまには民放のニュース番組を見ることにより、今までとは違う見方や自分が今まで興味を持つことがなかった特集などに出会い、新たな知見を獲得できるかもしれません。また、今までは話が合わないと思っていた部下と意外な接点ができるかもしれません。少なくとも、別にNHK以外の民放のニュースを見たとしても、それが大したことではないことに気づくのです。このような簡単な行為であったとしても、自分の「とらわれ」を解消することができ、凝り固まったメンタルヘルスを柔軟なものにする足掛かりになるのです。
実際、職場においても、人は自分の中で守らなければならないと思っている自分のルールによって、柔軟なメンタルヘルスを奪われてしまっています。例えば、「上司である自分が部下より先に帰るのは良くない」と考えている管理職の方や、「上司から頼まれた仕事は、とにかく期限を守って仕上げなければならない」と考えている部下などがその典型です。しかし、実際に管理職の方が部下より早く帰ってしまったらどうなるでしょうか。
もちろん、社運のかかったプロジェクトの納期間際でどうしても管理職が最後のチェックをしなければならない場合などは別ですが、多くの場合は部下の立場に立てば、早く管理職が帰ってくれたことで気楽に自分のペースで仕事ができるでしょう。さらに、自分の仕事が終わったら遠慮なく帰れるため、むしろ部下にも喜ばれることが多いでしょう。つまり、管理職の方が早く帰ったからといって、職場でさほど大きな問題となることはなく、むしろ職場には良い効果を生み出すかもしれないのです。
同様に、上司から頼まれた仕事に対し、部下が「その期限までには、どう考えてもできません」と言ったとしても、上司の立場から見れば「はい、必ず仕上げます」と言いながら結局は、期限に間に合わない部下よりよっぽど助かるはずなのです。実際に、職場において必死に頑張ることも重要ですが、冷静に状況や自分の能力を判断して、「できないものはできない」と伝えることも、ビジネスマンとしての重要な能力なのです。
うつ病などメンタルヘルス不調になりやすい方は「〇〇するべきである」や「必ず〇〇をしなければいけない」といった偏った思考をする癖があると言われています。しかし、ずっとこのような思考パターンを取ってきた方に、いきなり「部下より先に帰るようにしましょう」とか「できないものはできないと伝えましょう」とアドバイスをしたとしても、いきなり職場で大胆にそのような行動に出る勇気が持てないものです。そこで、このリハビリ期に「メンタルヘルスのアンチエイジング」を行い、まずは簡単に破ることができそうな自分のルールから順番に破っていくことによって、職場でも実践できる柔軟なメンタルヘルスを少しずつ獲得していくことが重要なのです。
また、この「メンタルヘルスのアンチエイジング」は一度きりで終わらせてしまうのではなく、継続的に行うことが重要です。人は経験という貴重な財産を獲得することの代償として、自分のルールを作り上げてしまうものなのです。そして、人は年齢を重ねると頭が硬くなると言われていますが、その硬くなった頭を柔軟にすることが、ストレス社会を上手に乗り切る一番のポイントになるのです。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。