2016年06月22日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「リワーク(復職)支援」の43回目です。引き続き、リワークについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】『○復職(リワーク)判定基準
復職判定(リワーク判定)に際してメンタルヘルス不全に関しては客観的判断基準がないために「主治医の主観的判断に依らざるを得ない」との回答が66.2%であり、この主治医の主観的判断が「患者様の意向に添う傾向があり、患者様に甘くなる」との回答が85.8%であった。』
主治医の85.8%が、復職判定に際して(リワーク判定に際して)、「患者様の意向に添う傾向があり、患者様に甘くなる」と回答しています。主治医は患者様に寄り添うことが求められるということからすると、至極当然の結果です。この回答結果から、主治医の復職診断書(リワーク診断書)には、ほとんどの場合、「労働者や家族の希望」が含まれているということが分かります。つまり、労働者や家族が「復職したい(リワークしたい)」と言えば、「復職可(リワーク可)」という復職診断書を書く(リワーク診断書を書く)こともありえるということです。
『○復職条件(リワーク条件)
主治医である精神科医・心療内科医のほとんど(96.2%)が「寛解状態」つまりメンタルヘルス疾患の再発・再燃の可能性はあるものの日常生活上支障のない治癒状態で良いと考えているのに反して、職場関係者からは「完全治癒」を要求された事が多い(74.3%)との結果であり、両者の想定する復職条件に大きな格差(リワーク条件に大きな格差)がある事を示していた。
このせいか、復職後(リワーク後)に再燃した場合、「(復職させた)主治医の判断((リワークさせた)主治医の判断)が甘かった」と職場関係者から問責されたとの回答が20.0%あった。』
主治医の判断は、あくまで「日常生活上支障のない治癒状態」であれば、復職可と判断(リワーク可と判断)しています。しかし、企業は、「完全に治癒したこと」=「職務が遂行できること」を復職の条件としている(リワークの条件としている)ことが分かります。
労働契約は、労働者が「債務の本旨に従った履行」をすることが求められています。職務を遂行できなければ、労働契約上の義務を果たしていないことになります。企業が「完全治癒」を求めるのは当然です。
もうひとつ留意しなければならないことがあります。それは、主治医の意見だけで復職させた場合(リワークさせた場合)に、復職後に「再発のおそれ」(リワーク後に「再発のおそれ」)があるということです。企業には「安全配慮義務」が課せられています。復職後に再発(リワーク後に再発)した場合、「主治医の判断だったから復職させた(リワークさせた)」としても、それで企業が負う安全配慮義務を全て免れることはできないということです。
以上、千里中央駅直結・千里セルシー3階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。