2016年06月01日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「リワーク(復職)支援」の28回目です。引き続き、リワークについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】官公庁や地方自治体などでは、「試し出勤」「試み出勤」などが制度化されている例が多く、復職(リワーク)へのステップとして位置付けられています。その代わりに、復職後(リワーク後)は原則として通常のフルタイム勤務として、特に事情がある場合を除いては短時間勤務などを設けない制度になっている例が多いようです。
(メンタルヘルス三次予防対策研究会報告書_地方公務員災害補償基金_200902)
官公庁や地方自治体は、中小企業などと比較すると、病気休暇制度や休職制度が充実しています。職場環境などを含めて、休職期間を利用して職場でリハビリを行うことが比較的容易だという事情もあるのではないかと思います。また、復職可否(リワーク可否)の判断に必要な客観的な情報が得られるので、本人や労働組合などとの軋轢も軽減できるという面もあるのではないかと思います。
民間の大企業などでは、「試し勤務」制度による職場への負荷で生産性が低下するのを避けるため、EAPサービス会社が提供するリワークプログラムなどを採用する動きもあります。リワークプログラムを採用する場合は、EAPサービス会社が提供するリワーク施設などに模擬出勤して、軽作業やパソコン操作などを行って職場復帰の準備(リワークの準備)をすることになります。休職から復職に至る(リワークに至る)プロセス管理全体をEAPサービス会社に委託している企業もあります。
中小企業の場合は、休職可能期間を、傷病手当金の受給可能期間の上限である1年6ヵ月より短く設定している例もあり、かつ、職場でリハビリを行わせるほどには余裕がないという事情があります。産業保健スタッフも衛生管理者ぐらいしかいないということになると、長期間にわたる「試し勤務」を制度化するのはなかなか難しいというのが実情ではないでしょうか。
ところで、最近では、復職可否の判断(リワーク可否の判断)基準として、生活記録表を用いて、直近2週間の生活リズムが整っていることを復職の条件(リワークの条件)の1つとすることが一般的になってきています(メンタルヘルス不調者復職支援(リワーク支援)マニュアル:難波克行・向井蘭)。「試し出勤」制度は、この生活リズムが整っているかどうか、そして、職場復帰の意欲(リワークの意欲)が十分にあるかどうかを客観的に確認できる手段です。
「試し出勤」制度にはメリットとデメリットがあります。とはいえ、それぞれの企業の実情に応じた形で、できるだけ有効に「試し出勤」制度やリワークプログラムを活用するのが良いのではないかと考えています。
以上、千里中央駅直結・千里セルシー3階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。