2016年05月14日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「リワーク(復職)支援」の27回目です。引き続き、リワークについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖復職(リワーク)前(休職中)の「試し出勤」制度のメリットとデメリット〗
前回は、復職前(リワーク前)(休職中)に行う職場でのリハビリである「試し出勤」の制度をご紹介しました。
職場復帰支援(リワーク支援)のための「試し出勤制度」は、休職期間中に、無給で行うのが原則。
今回は、「試し出勤」制度を実施することのメリットとデメリットについて考えてみたいと思います。
「試し出勤」制度を取り入れる理由は2つあります。
1つ目は、復職可能(リワーク可能)かどうかの判断材料として有効だからです。
職場環境の中で実際の仕事に近い作業を行いますので、定められた出勤時間に出勤ができるか、退勤時間まで職場に滞在できるか、職場の同僚や上司とコミュニケーションが取れるか、作業の進捗状況はどうか、などについて、周囲から客観的に評価することができます。主治医や産業医の意見に加えて、「試し出勤」中の出勤率や作業状況などを復職可否(リワーク可否)の判断材料とすることで、より納得性のある判断基準の運用ができます。
2つ目は、復職にスムーズ(リワークにスムーズ)に繋げ易いという点です。
実際の職場で復職準備(リワーク準備)を行うことになりますので、最終的に復職可能と判断(リワーク可能と判断)された場合、そのまま正式な勤務として取り扱えばよいことになります。新たな環境に適応する必要がないので、復職への精神的なハードル(リワークへの精神的なハードル)が低くなります。『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(リワーク支援の手引き)』(復職ガイドライン(リワークガイドライン))でも「試し出勤制度等を設けている場合、より早い段階で職場復帰の試み(リワークの試み)を開始することができ、早期の復職(早期のリワーク)に結びつけることが期待できる。」とされています。
しかし、「試し出勤」制度には、問題点もあります。
1つ目は、職場の負担が大きくなるという点です。「試し出勤」制度は、いわば職場をリハビリ、リワークの場として使うことになります。本来、職場は働く場、労務を提供する場であり、リハビリの場ではありません。周囲の同僚も上司も、リハビリの専門家ではありません。皆それぞれの仕事に追われており、本人をメンタルヘルスケアできる程の余裕がない場合もあります。つまり、職場に負荷がかかるということになります。
休職期間中の人が同じ職場にいて、その人は仕事をしていないのに私は忙しい、ということになると、職場内に不平不満が生まれやすくなります。短期間であれば、周囲の頑張りで乗り切れるでしょうが、長期にわたると、周囲の同僚や上司などの精神的な負担も大きくなりがちです。仕事の効率が落ちることも考えられます。企業としては、このような事態は避けたいと考えるのは当然です。
2つ目は、本人の負担が大きくなり、返ってメンタルヘルスの回復を妨げるという意見があります。
産業医学の専門家の意見によると、あくまでメンタルヘルス疾患の治療中なので、「試し出勤」の進捗状況をサポートできる専属産業医や産業看護師などの産業保健スタッフも必要になります。職場に居ることを認める以上、休職中とはいえ、企業には一定の安全配慮義務があると考えられるからです。
以上、千里中央駅直結・千里セルシー3階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。