2016年05月07日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「リワーク(復職)支援」の26回目です。引き続き、リワークについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】先ず、最初は賃金です。原則として、休職期間中で傷病手当金を受給している場合は無給です。報酬が支払われた場合は、「病気によって就労ができない」という状態ではなくなり、傷病手当金の受給ができなくなるからです。では、交通費はどうでしょうか。全国健康保険協会(協会けんぽ)によると、交通費も報酬と認定されます。ただ、一部の健康保険組合では、交通費の支給を認めている例があるようです。
賃金がない、つまり労務の提供がないので、労災保険は適用されません。通勤災害も適用されません。試し出勤規定を作るとともに、労災保険が適用されないことについて労働者から書面での同意を得ておくべきです。会社によって、この期間中に発生した事故に対応する傷害保険を用意しているところもありますが、加入するかしないかはあくまで労働者の任意です。保険料も労働者が負担するのが一般的です。
この試し出勤制度は、あくまで労働者の自由な意思に基づく任意の制度です。労働者とよく協議して、十分な理解を得た上で実施する必要があります。出勤時間や退勤時間については、試し出勤計画を作成するときに、労働者と話し合って決めておきます。強制することはできません。ただ、出勤時間は通常の始業時間として、午後出勤などは行わない方が、職場復帰(リワーク)に繋がり易いとされています。
職場での滞在時間は、最初の一週間程度は、職場への顔出しや午前中の短時間として、その後は午後に跨る短時間勤務を経て、フルタイム勤務に移行する形が一般的です。個々の試し出勤計画の中でスケジュールを策定します。期間の目安は1ヵ月間程度、長くても2ヵ月間以内が目途となります。
『職場復帰支援(リワーク支援)の手引き』(復職ガイドライン(リワークガイドライン))の中でも「具体的な職場復帰決定(リワーク決定)の手続きの前に、職場復帰の判断(リワークの判断)等を目的として行うものであることを踏まえ、職場復帰の目的(リワークの目的)を達成するために必要な時間帯・態様、時期・期間等に限るべきであり、いたずらに長期にわたることは避けること。」とされていますので、注意が必要です。
職場で行う作業ですが、無給ですので労務の提供をさせてはならないことになります。ですので、会社には指揮命令権はありません。作業を指示したり、作業量を決めたりすると、無給で働かすことになるので賃金不払いになってしまいます。また、メンタルヘルス疾患が治っていない状態で職場で作業をすることになりますので、何らかの事故があった場合には、安全配慮義務違反に問われる可能性もあります。
ただ、全く会社の業務を行ってはならないかというと、そうでもありません。元労働基準監督署長によると、「リハビリの一環として実際の業務に試しに取り組んでみることまで禁止されているわけではない。あくまで、会社が指揮命令をしない、労働者が自由な意思で作業をしていることが認められるならば、容認できる範囲内なのではないか」とのことです。
以上、千里中央駅直結・千里セルシー3階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。